好きだ、でも人間を許すことはできないbyサンモロ「つらいか…そこからとび ..
サンのことを育ての母である犬神・モロの君は「森を侵した人間が我が牙を逃れるために投げてよこした赤子がサンだ。人間にもなれず、山犬にもなりきれぬ哀れで醜い可愛い我が娘だ」と言う。愛情と同情を一身に受け、自身の命への執着心に乏しく、刹那的に生きてきたサン。そんな彼女に殺されそうになりながらも、怯むことなく伝えたアシタカの「生きろ……そなたは美しい」の言葉の破壊力たるや。これはもちろん外見的なことではなく、サンの人間としての価値を認め、本能を呼び起こすものだったろう。ともあれ、もしこの作品が1997年ではなく、今、デジタルネイティブ世代がテレビでもなく初めての出会いを映画館で経験していたとしたら、おそらくこの言葉だけが独り歩きするほどの名言としてSNSでバズったのではないかと思う。
さらに、「アシタカは好きだ。でも、人間は許せない」と言うサンに対して、「それでもいい。サンは森で、わたしはタタラ場で暮らそう。共に生きよう。会いに行くよ」と約束する。相手の思いや価値観、生き方を尊重し、自分自身の生き方も貫くアシタカは、ヒロインを守る王子様ではなく、どこまでも公平で対等な関係性だ。これは女性のみならず、多くの人を引き付ける大きな要素だろう。
舞台は、日本が中世から近世へと移ろうとしていた室町時代。蝦夷(エミシ)の隠れ里にすむ青年アシタカは、邪悪な「タタリ神」となったイノシシから受けた呪いを絶つため、遠く西の地を目指して旅立つ。そこで目にしたのは、森を切り開いて鉄を作るタタラ場を治めるエボシ御前と、「シシ神の森」を守る山犬の一族、山犬と共に生きる少女サンの対立だった。
サンの『アシタカは好きだ。でも、人間を許すことはできない』というセリフは、アシタカのプロポーズに答えているのです。#もののけ姫.
青く、愚直に「くもりなきまなこで物事を見定め、決める」アシタカは、複雑で混迷した今の時代に欲しいリーダー像であり、と同時に、私たち一人ひとりが生きていくうえで手に入れたい強さの象徴でもあるのではないだろうか。
帝(みかど:天皇)からの命令でシシ神ごろしを任命された唐傘連(からかされん)のリーダー:ジコ坊。旅の道中でアシタカが出会い、一緒に食事をしますが、彼が”師匠からの受け売り”として大事にしているのがこの言葉です。