第57回「日米金利差とドル円レート」 知るほどなるほどマーケット


先進国の中では歴史的に金利が高い通貨ですので、金利動向には敏感に反応します。またRBA総裁などの金融当局者や、政府閣僚などから、為替水準に関する発言が比較的多くあり、その内容が市場で注目されます。高金利を背景に投資対象として見られることが多いことから、世界が政治的、経済的に安定している時には豪ドル高になりやすく、反対に混乱すると豪ドル安になりやすい性質があります。
現在は輸出主導型から内需中心の経済へ移行しつつありますが、それでも豊富な天然資源や食料品の輸出は盛んです。したがって、世界的な景気に影響を受けることはもちろん、貿易相手として輸出入ともに第1位の中国の景気に左右されるため、自国の経済指標と同様に中国の経済指標も豪ドル相場に大きく影響します。また資源国通貨の側面もあることから、原油・鉄鉱石・金など資源価格の変動も、豪ドル相場を動かす要因となり、商品市況の動きにも注意する必要があります。


豪ドルは先進国通貨でありながら資源国通貨の側面をあわせ持つ通貨です。資源価格が上昇すると豪ドル相場も上昇する傾向があります。
オーストラリアは歴史的に先進諸国の中ではインフレ率が高くなりがちなことから、金利も他の先進諸国よりも高くなる傾向があります。そのため、世界的に政治・経済が安定している時には金利狙いの資金が集まりやすく、豪ドルも高くなる傾向がある一方、突発的な混乱が生じると、一気に資金が流出して豪ドル安となることもあります。
米ドルやユーロなどと比べると、市場規模が小さいため、投資資金の移動が始まると一方的な動きとなりやすい特性もあります。また値幅も非常に大きく、変動のスピードも速くなることが多いため、余裕をもった投資を心掛けることが必要でしょう。

オーストラリアは世界第6位の広大な土地 (日本の約20倍) に約2,626万人 (2022年12月) の人々が暮らす国です。19世紀に全土がイギリスの植民地となって以来、主にイギリスからの移民によって人口が拡大しました。現在でも英国連邦に属し、英国のチャールズ3世国王がオーストラリア国王を兼ねていて、英国との親密な関係が維持されています。
先進国でありながら金、鉛、ニッケル、ウラン、亜鉛、鉄鉱石などを産出する天然資源が豊富な国です。そのため新興国の成長によって“資源ブーム”が起こった2003年から2007年頃には、オーストラリア経済も好調で、オーストラリアドル (豪ドル) は金利が高く、投資家の人気を集めました。しかし、新興国経済が減速した2016年以降は、経済成長が伸び悩み、金利も低下傾向でした。
輸出における資源・エネルギーの割合は約50%と非常に高いものの、実は鉱業がオーストラリアのGDPに占める割合は約10%とそれほど高くはありません。GDPの約70%は金融や公益事業、消費関連などのサービス業が占め、オーストラリア経済の主役となっています。移民政策も含め、先進国としては珍しく当面の人口増加が見込まれている点にも注目すべきでしょう。しかしやはり資源・エネルギーの輸出はオーストラリア経済の足元を固めています。その点で今懸念があるとすれば、輸出入ともに相手国として中国が第一位である点です。中国の景気に左右されやすく、今後の米中関係、中露関係の行方や、中国の太平洋への進出によって豪中関係に変化があると、大きな悪影響が出る可能性があります。
コロナ禍に対しては、当初は国境封鎖をはじめとする強力な感染対策による封じ込めに成功しましたが、その後、感染が拡大するとともに、第2の都市メルボルンでは累計で世界最長となったロックダウンが実施されるなど経済活動に深刻な悪影響が出ました。ただ、出遅れたワクチン政策が軌道に乗ったことで、2022年10月にはほとんどの規制が解除されました。
2022年2月にロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻を開始して以来、オーストラリアを含む西側諸国はウクライナに物心両面で支援を続けていますが、ロシアに対しては経済制裁を科すなど厳しい姿勢を示しています。この間も中国は西側諸国と異なってロシアとの緊密な関係を維持しています。加えて中国による海洋進出をけん制することも目的のひとつとしてAUKUS (豪、英、米) やQUAD (日、米、豪、印) などの取り組みも始まっています。さらにソロモン諸島と中国が安全保障協定を締結したことをオーストラリアは強く懸念していて、今後豪中関係に大きな変化があれば経済へのネガティブな影響となることが考えられます。
長年高金利が魅力とされてきた豪ドルですが、コロナ禍後の利上げサイクルでは米英などに比べやや慎重な利上げペースとなっていました。中央銀行であるオーストラリア準備銀行 (RBA) は2022年5月に政策金利を0.10%から0.35%に引き上げて利上げを開始し、2023年6月までに4.10%まで引き上げました。その後アメリカの利上げが終了したとの見方が広まる中、しばらく様子見をしたものの2023年11月に再び4.35%へ引き上げました。
2024年3月、日銀金融政策決定会合で「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」として、2013年から続けてきた異次元緩和が終了され、約17年ぶりとなる利上げが決定されました。しかし植田日銀総裁が今後の金利の引き上げペースに関して「急激な上昇というのは避けられるとみている」と述べたことなどから、緩和的な金融政策が継続されると見られています。
一方RBAは2024年6月の理事会まで政策金利を据え置いていますが、「インフレ上昇リスクに引き続き警戒する必要があることが再確認された」「インフレ率を2~3%の目標範囲に戻す道のりはまだ長い」として、必要であれば追加利上げを排除しないと改めて表明しています。すでに2024年6月に利下げをしたユーロ圏に続いて、アメリカ、英国など主要国が年内に利下げに転じると見られる中、タカ派的な態度を崩していないオーストラリアは、他国との違いが際立つ形となっています。

米長期金利(米国10年国債利回り)チャート、2021年見通し解説、時系列データ。ドル円や米政策金利とのチャート比較も。

ここでは、FXで注目されることが多い主要国の政策金利の推移と、各国の2024年の政策金利発表日を一覧で紹介します。

「政策金利」とは、各国の中央銀行が主に物価の安定を目的として設定する金利のこと。政策金利と為替レートには相関性があることが多く、政策金利の変動は為替相場に影響を与えます。

Auカブコム証券株式会社 金融商品取引業者登録:関東財務局長(金商)第61号 銀行代理業許可:関東財務局長(銀代)第8号 電子決済等代行業者登録:関東財務局長(電代)第18号 加入協会:日本証券業協会・一般社団法人 金融先物取引業協会・一般社団法人 日本STO協会・一般社団法人 日本投資顧問業協会・一般社団法人 第二種金融商品取引業協会(加入順)

Auカブコム証券のホームページ上の一部情報は、東京証券取引所、大阪取引所、株式会社QUICK、東洋経済新報社、日本経済新聞社、トムソン・ロイター社、モーニングスター社、株式会社フィスコ、株式会社FXプライムbyGMO、ジャパンエコノミックパルス社、株式会社みんかぶ、野村インベスター・リレーションズ株式会社からの情報提供をもとに公開しております。これらの情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。情報の内容につきましては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。万一この情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社及び情報提供者は一切の責任を負いかねます。


[PDF] 図 ドル・ペソレート、政策金利、外貨準備高の推移

2つ目の指標は、雇用統計です。雇用統計の中でも特に注目される指標が「失業率」です。失業率が上昇するということは景気後退が懸念されるということになり、金利を下げることによって経済活動の活発化を促します。失業率が低水準で推移していれば、雇用の安定が保たれているとみなされ、基本的には金利は据え置きとなります。
市場では、政策金利が発表される前からこのような指標を確認し、今後金利が上がるのか下がるのかを予測しています。

積立利率変動型一時払終身保険(米ドル保険料建 15)/積立利率変動型一時払終身保険(豪ドル保険料建 15) · サニーガーデンEX.

市場参加者の一部は日米金利差の縮小に関心を寄せており、こちらを材料に外為市場でドル売り・円買いが出れば、輸出株などの頭重さに影響する可能性もある。週明けは引き続き ...

積立利率の推移 · 積立利率(米ドル) · 積立利率(豪ドル).

FOMCが金融政策の方針を決める際に重視している指標があります。
その1つがCPI(消費者物価指数)です。金融政策を行う目的の1つに「物価の安定」がありますが、物価が安定しているかどうかを知る代表的な指標がこのです。CPIが前年比で高い状態がずっと続くと過度な物価上昇(インフレ)を招き、消費者の購買意欲が低下し、企業の売上が減少するといった経済にとってよくない状態に陥るため、政策金利を上げてそれを阻止する動きが強まります。
逆にCPIが前月比でマイナスになり、インフレが抑制されているとみなされると、市場では利下げ期待が高まります。

日米の金利差拡大でFXに注目!米ドル/円スワップポイント増加中!

前営業日の米株式市場が上昇しており、日本株の一角でも買いの先行する場面が見られた。電気機器のソシオネクストやアドバンテストなどが上昇。また不動産業の東京建物や東急不動産ホールディングスも堅調な展開となった。米長期金利が下落するなか株式は買われやすさが想起され、情報・通信業のエクサウィザーズなどが上昇、このほか高PERな銘柄も買い圧力が意識された。

日米の対照的な金融政策により、22年3月以降、金利差が拡大しています。 日本・米国の金利推移

下図はここ10年の米国の政策金利の推移です。
金融危機(リーマンショック)の後、景気後退に対応するためゼロ近くまで引き下げられていた短期FFレートですが、2018年には経済が回復し、今度はインフレ懸念のため、金利が段階的に引き上げられました。しかし、その後コロナが蔓延、パンデミックの影響で経済が停滞したことにより、再びゼロ金利政策が導入され、さまざまな景気対策も打たれました。その後、景気が回復し、インフレ懸念が再燃したため、金利が引き上げられたという流れです。
このように、金利は景気と密接に関わり、「金利低下」→「景気回復」→「金利上昇」→「景気後退」→「金利低下」…を繰り返しています。

三井住友銀、ドル建て定期預金の金利5.3%に引き上げへ 他行は?

米国の株価が上昇すると日本の株価もそれに影響されて上昇し、下落した場合も同様に米国に追随することが多くあります。これは、「株式というリスク資産から資金が引き上げられるということは、米国だけでなく世界全体のリスク資産から資金が引き上げられるのでは」と懸念されるためです。これをリスクオフといい、リスク資産に投資をしている人は資産が目減りしますので、注意してください。逆に、株式というリスク資産に資金が流れる動きをリスクオンといい、これもまた世界全体へ波及することが大いにあり得ます。

三井住友銀行は米国の長期金利の上昇をうけ、25日から米ドル建ての個人の定期預金の金利 ..

金利と株価の関係を資金の動きとあわせて考えてみます。金利が上がると、預金金利や債券に付く金利が増えるため、リスクを取って株式投資をしなくても、低リスクで金利が付くほうにお金が流れます。よって株価は下落傾向になります。
逆に金利が下がると、金利が低い預金や債券に投資しても、あまりメリットがないため、これから経済が上向きになって成長が期待できる株式投資に資金が流れ、株価は上昇傾向となります。

長期金利(日本国債10年・米国債10年・ドイツ国債10年)の推移

また、為替は日本の企業業績にも大きな影響を与えます。海外で販売した商品の売上を円換算した場合、円安のほうが円高のときよりも売上金額は多くなりますので、輸出企業にとって円安は有利に働きやすくなります。日本の代表的な企業には輸出産業が多いため、円安になると日本全体の株価は上昇する傾向にあります。ただし、円安は輸入企業には不利になりますので、個別の銘柄で考えれば、一概に円高が良いともいえません。
一方、企業側でも、為替リスク対策として為替予約をおこなったり、円建てで取引を行うなどの対策を講じています。輸出企業では、現地生産などを行うことで為替に左右されにくい企業体質に改善するといった工夫をしているようですので、少し為替が動いたからといって、すぐに業績に影響が出るわけではありません。とはいえ、予想外に大きく動く場合には、業績への影響も大きくなるので金利変動時には為替の動きを注視する必要があります。

個人向け外貨普通預金の金利(有人店舗限定) ; 米ドル建て個人向け外貨普通預金(有人店舗限定) · 米ドル

金利の影響を大きく受けるものとして為替が挙げられます。例えば、米国の政策金利が上昇し、日本が金利を据え置いた場合、日米の金利差が拡大します。そうするとドル資産を持っているほうが高い金利を得ることができるので、ドル資産を購入する人が増えて、ドルの需要が高まり、ドル高円安となる傾向にあります。逆に米国の政策金利が下落した場合、金利が低い通貨は魅力が減少しますので、通貨価値が下落して、ドル安円高にふれる可能性が高まります

為替ドル円と米10年債金利の複合チャートで相関関係を検証。2024年12月24日までの90日間の相関係数は0.98659.

今後の政策金利がどう動くのかを予測するにあたっては、指標ではありませんが、FOMCメンバーの声明もとても重要です。メンバーはFOMCにおける投票権を持っているため、議長以外のメンバーの発言も注目されます。
FOMCの構成メンバーは12名で、うち7名が理事(議長を含む)、残りの5名はアメリカに12地区ある連邦銀行の総裁です(NY連銀総裁は常任で、残り4名は持ち回り)。FOMCのメンバーがどのような発言をするかによって、「そろそろ金利が動くのではないか」と推測されることがあります。
これは、FOMCでいきなり利上げ・利下げを発表すると市場が混乱するため、その準備段階として、少しずつそのスタンスを市場に知らしめる目的もあります。これは市場との対話を大切にするFOMCの考えでもあり、私たちはメンバーの発言を通してFOMCからのメッセージを読み取ることも政策金利を予測する上で大切です。

円高圧力強まるか FOMCで利下げ決定へ 日米金利差は縮小見通し

ここでは、米国と日本を例に、資産運用の効果をご説明します。
以下のグラフは、2002年12月末~2024年3月末までの米国と日本の金利の推移を比較したものです。この期間において、ことが見てとれます。