フォシーガの心不全への効果について、ここまで解説したことをまとめました。
慢性心不全の半数以上を占めるとされるHFrEFの治療では、▽アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)▽アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)▽ベータ遮断薬▽ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)▽利尿薬――などを必要に応じて組み合わせて使うのが標準的。一方、HFpEFでは、死亡やイベントの発生を抑制する効果を明確に示した薬剤はなく、利尿薬によるうっ血の改善や原疾患に対する治療が中心となります。
慢性心不全では昨年以降、新規の作用機序を持つ薬剤が相次いで登場しています。
心不全になると、心臓のポンプ機能が低下して体全体に十分な量の血液を送り出せなくなります。さらに、全身の血液が心臓に戻る機能も低下し、血液が滞るうっ血が起こります。
フォシーガと心不全に関連してよくある質問にお答えしていきます。
では、具体的にどの部位に働いて効果を発揮しているのでしょうか?
次項から、心不全におけるフォシーガの働きについて詳しく解説していきます。
また、フォシーガは心不全だけでなく腎臓病の治療でも使用されています。
腎臓への効果については別の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
昨年11月には、小野薬品工業のHCNチャネル遮断薬「コララン」(一般名・イバブラジン塩酸塩)が、今年8月にはノバルティスファーマのアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬「エンレスト」(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)が発売。11月には、アストラゼネカのSGLT2阻害薬「フォシーガ」(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)も適応拡大の承認を取得しました。
心不全では、線維芽細胞という炎症を起こす機能を持つ細胞が過剰に増殖することで、細胞外マトリックスという物質が増加し心機能に悪影響を及ぼすことがあります。
できる?』」の初回は、フォシーガを取り上げます。慢性心不全の患者さんに「フォシーガ ..
フォシーガは、腎臓で行われる糖の再吸収という工程を抑制し、尿に糖が排出されないようにする体内の働きを阻止します。
この工程が抑制されると糖が尿から排出されるようになり、糖とともに水分も一緒に排出されるため尿量が増加します。
これにより体内の水分量や血液量が減少し、心臓の負担軽減やうっ血の改善につながるのです。
その結果、フォシーガの腎臓への働きは、間接的に心不全を改善する効果になっています。
3) 日本循環器学会・日本心不全学会:心不全治療における SGLT2 阻害薬の適正使用に関する.
慢性心不全は、主に「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」と「左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)」に分類されます。HErEFは左室筋が十分に収縮できないことによって起こる心不全で、HFpEFは心筋の収縮は正常ながら心室が十分に拡張しないことが原因で起こる心不全です。
心不全患者において、SGLT2 阻害薬(ダパグリフロジンとエンパグリフロジン)は 2 型
エンレストは、ARBバルサルタンとネプリライシン阻害薬サクビトリルを1分子中に1対1で含有する単一の結晶複合体です。心保護因子であるナトリウム利尿ペプチド(ANP)を分解するネプリライシンを阻害してANP系を増強するとともに、心臓刺激因子であるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の過剰な活性化を抑制。慢性心不全に対する標準治療を受けている患者が対象で、ACE阻害薬またはARBからの切り替えで使用されます。
心不全に対するSGLT2阻害薬の使い方についてまとめてみた 2023.12
フォシーガは、腎臓の近位尿細管付近でグルコースやナトリウムの再吸収に関わるSGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)を阻害する薬剤。心不全に対する作用メカニズムには諸説ありますが、腎臓を介した作用や血管への作用に加え、心臓への直接的な作用によって心不全への効果をもたらすと考えられています。国内では14年から2型糖尿病治療薬として販売されていますが、心不全では2型糖尿病の有無を問わず使用可能です。
SGLT2阻害薬は心不全でも腎障害でも頼りになるマルチプレイヤー
エンレストはHFrEF患者8442人を対象とした海外臨床第3相(P3)試験「PARADIGM-HF試験」で、ACE阻害薬エナラプリルに比べて心血管死と心不全による初回入院からなる複合エンドポイントのリスクを20%抑制。フォシーガも、HFrEF患者4744人を対象とした国際共同P3試験「DAPA-HF試験」で、複合エンドポイント(心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診)のリスクをプラセボに比べて26%抑制しました。
SGLT 2阻害薬がなぜ慢性腎臓病、慢性心不全に用いられるのか?
新たな薬剤が相次いで登場している状況に、九州大の筒井教授は「心不全治療に新たな潮流が訪れた」と指摘。DAPA-HF試験の治験担当医師を務めた阪和第二泉北病院の北風政史院長は「SGLT-2阻害薬は幅広い心不全患者に使えるが、特に、高齢者、再入院を繰り返す患者、腎機能が低下した患者、比較的症状の軽い患者にとっては福音となる。心不全治療のニューノーマルだ」と話します。
AZ SGLT2阻害薬フォシーガ 日本で慢性心不全の効能追加を申請
皆さん、こんにちは!
今回は糖尿病治療薬の1つであるSGLT2阻害薬の「フォシーガ」(一般名ダパグリフロジン)が、日本において慢性心不全に対する効能又は効果の追加承認を取得されましたので紹介したいと思います。
まず、SGLT2阻害薬とはその名のとおり、SGLT2の働きを阻害する薬剤です。
SGLT2の働きを阻害すると、近位尿細管でのグルコース再吸収が減り、その分だけ尿糖の排泄が増えます。
その結果、高血糖が改善されます。
そんな糖尿病治療薬がなぜ、心不全の治療薬として使用できる事になったのでしょうか?
もともと、糖尿病は心不全の進展要因であることは、多くの研究で明らかにされていました。
同時に、糖尿病は心血管疾患の主要な危険因子でもあります。
しかし、従来の糖尿病治療薬は心不全に対する予防効果を示すエビデンスに乏しいものでした。
ところが、2015年頃から、いくつかのSGLT2阻害薬が動脈硬化性心疾患合併の2型糖尿病患者の心不全入院や心血管死を減少させるという結果が報告され、SGLT2阻害薬の心保護作用に注目が集まりました。
ところが、それらの試験対象の多くは心不全を合併していない糖尿病患者でありました。
そこで、糖尿病合併の有無を問わず、心収縮能低下した心不全患者に対するダパグリフロジンの上乗せ投与効果を検証した大規模試験を行ったところ、糖尿病合併の有無に関わらず、ダパグリフロジン上乗せは有意に心血管死、心不全を抑制するという結果が報告されました。
ここで注意したいのが、本研究の対象が心不全の標準治療を受けている(ACE阻害薬・ARB、β遮断薬は9割以上、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が7割以上導入されている)患者であったため、ダパグリフロジンはあくまで標準治療をうけた慢性心不全患者に限り適応となります。
それと左室駆出率が保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与することとされています(添付文書参照)。
今後、他のSGLT2阻害薬も適応承認に追随すると思われますが、そこで気になるのが作用機序だと思います。
しかし、SGLT2阻害薬の心不全への作用機序は、いまだはっきりとわかっていません。
その作用機序が基礎実験や臨床研究から少しずつ明らかになっているところなのです。
恐らく諸説ありますが、腎臓を介した作用や血管への作用に加え、心臓への直接的な作用によって心不全への効果をもたらすと考えられています。
これらから、SGLT2阻害薬は心不全患者にとって、これまでにない新しい治療薬と期待されます。
今後の動向が気になるところです。
薬学生の皆様、将来現場に出て既存薬で治療が不十分な患者さんがおられましたら、医師と協議して検討してみてはいかがでしょうか?
是非、参考にしてください。
心不全が対象 「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)は日本では、2型糖尿病、1型糖尿病、慢性心不全 ..
- 左室駆出率にかかわらず慢性心不全の治療薬として使用可能に -
慢性心不全や慢性腎臓病では10mgが使われることも。疾患や状態によって ..
アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:堀井 貴史、以下、アストラゼネカ)と小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁)は、アストラゼネカの選択的SGLT2阻害剤「フォシーガ®錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下、フォシーガ)」について、既承認の慢性心不全の「効能又は効果に関連する注意」に記載の「左室駆出率」に関する記載を削除、およびそれに関連する情報を追記し、日本における電子化された添付文書(以下、電子添文)を改訂したことをお知らせします。
フォシーガ、標準治療を受けている慢性心不全で追加承認-AZほか
心臓は通常、拡張と収縮を繰り返しますが、心不全の人は血液を送り出すことが難しくなり心臓が拡張します。
この負担を軽減することがフォシーガの特長です。
フォシーガ(ダパグリフロジン)の作用機序【糖尿病/心不全/CKD】
これらは、上記のDELIVER試験の結果に基づき変更されました。今回の電子添文の改訂により、フォシーガは左室駆出率を問わず慢性心不全患者の治療薬として使用いただけるようになりました。