150円超の円安進行、日銀の利上げ早める要因になり得る-門間元理事
最初に1990年代を振り返ってみましょう。図1は1993~2000年のFF金利とドル円レートの動きを示したものです。1994年と1999年が連続的な利上げ局面の開始時期に当たります(1997年にも単発の利上げがありました)。
続いて図2は2002~2009年の動きです。この間は2004年に連続的な利上げが開始されました。この利上げ局面では、FOMCの毎会合で0.25%ずつの利上げが行われ、この利上げの動きは「メジャード(慎重な)・ペース」と呼ばれました。
最後に、図3は2015年以降のFF金利とドル円レートです。2015年12月に利上げが開始されましたが、2回目の利上げはその1年後であったため、連続的な利上げ局面の開始といえるかどうか難しいところです。なお、図2と図3の間の2010~2014年は政策金利に変更はありませんでした。
日銀追加利上げ観測で進む円高と円高に連動した株価の急落|2024年
以上の3つの図で4回の利上げ開始局面を示しましたが、利上げ開始後のドル円レートを見ると、4回とも円高ドル安方向に動いていることがわかります。図2の2004年の利上げ開始時は、直後は円安ドル高で反応したものの長続きせず、4ヵ月ほど横ばい圏で推移した後、円高へ振れました。図3の2015年の利上げを単発と見て、2016年12月の利上げを連続利上げの開始と捉えたとしても、やはり円高に動いています。
もちろん、米国の政策金利だけで為替レートが決定されるわけではないので、その他の要因も考慮する必要がありますが、過去の利上げ開始時のドル円レートの反応を見ると、金融市場の格言として知られる”Buy the rumor, sell the fact”、つまり「噂で買って事実で売れ」が思い起こされます。
「噂で買って事実で売れ」は、ニューヨーク株式市場から出てきたと言われますが、買い材料は思惑のうちに株価に織り込まれ、事実として公表された時には十分に株価が上昇してしまっていることを意味します。為替レートを株価と同一視することはできませんが、金融市場が将来を先取りして動く性質は共通しています。
FRBが2020年3月に新型コロナウイルスのパンデミックへの対応で大幅利下げに踏み切って以来、初めての利上げが間近に迫ってきています。今後、政策金利の日米格差が拡大していくことになりますが、米利上げで為替レートがどのように反応するのか、過去の米利上げ局面を1990年代まで遡って確認しておきたいと思います。
5カ月ぶりに一時1ドル=157円台に 日銀利上げ見送り、円安進む
【円安再燃、1ドル160円に逆戻りするリスクは?~マーケット・カルテ11月号】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
円安是正、0.25%への追加利上げ ~7月の日銀決定会合~ | 熊野 英生
門間氏は、円相場が対ドルで「さらに150円、155円まで下落し、人々が円安と物価上昇を懸念し始めたら、日銀は次の利上げのタイミングを早めることになるだろう」と語った。ブルームバーグ東京支局で10日に開催されたイベントのパネル討論会で英語で述べた。
12月19日、日本銀行は金融政策の現状維持を決め、一時1ドル157円台まで円安が進んだ。ただ、今後の政策金利の方向性は上向きである。
実際に、図3にあるように、2021年の円安ドル高傾向は、将来の米国の利上げ開始を先取りして動いた側面があります。2021年前半の円安ドル高は利上げよりも財政出動や資産買い入れ縮小(テーパリング)観測が主因と見ていますが、2021年後半の円安ドル高は、FRBが2022年に利上げを開始するという見方が強まり始めた昨年10月頃が起点となっています。11月にテーパリグ開始、12月にテーパリング加速が決定され、2022年3月にテーパリング終了すると示されると、同月に利上げするとの観測が高まり、円安ドル高が進行したのは、読者の皆様の記憶に新しいのではないでしょうか。
日銀、円安対応で利上げも 米国にインフレ再燃懸念―トランプ氏勝利
同日の外国為替市場の円相場は対ドルで一時1ドル=149円50銭台に下落。米国景気の軟着陸期待などで米利下げ観測が後退する中、心理的節目の150円に接近した。円安による物価上昇が改めて意識される中、門間氏の発言は円安が日銀の追加利上げ判断の重要な材料になり得ることを示すものだ。
米大統領選で、大規模減税など景気刺激策を掲げたトランプ前大統領が勝勢となり、6日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで急落した。
前述したように、為替レートに影響するのは米国の政策金利だけではないので、その他の材料も考慮しなくてはなりませんが、足もとのドル円レートが米利上げをどの程度まで織り込んでいるのか、1990年以降は利上げ開始で円高ドル安に動いてきたが今回は異なるのか、熟考しながら、3月15~16日のFOMCに備えましょう。
ドル・円は伸び悩みか、ドル買い継続も日銀追加利上げに根強い期待
日銀は円安による物価見通しの上振れリスクに配慮し、7月の金融政策決定会合で追加利上げを決定した。9月の会合前にブルームバーグが実施したエコノミスト調査では、12月を筆頭に来年1月までの追加利上げを9割近くが予想している。
また再び円安リスクが強まる ~7月の追加利上げでも止まりにくい
日銀前副総裁の若田部昌澄早稲田大学政治経済学術院教授は同討論会で、「為替レートからインフレ率への転嫁が大きくなっている可能性があることは理解している」としながらも、「為替レートがインフレ率にどの程度影響を与えるかはあまり明確ではない」と指摘。7月の利上げは時期尚早だったとし、為替レートに影響されて政策決定を行うことは「重大な過ち」だとの見解を示した。
円安進行143円台 日銀が利上げから距離 アメリカ経済見通しに不安
日銀の金融政策を巡っては、石破茂首相が首相就任後の2日に、「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」との見解を表明。ただ、翌日には政策判断に「時間的余裕はある」とした植田和男総裁の認識を念頭にしたと釈明するなど、一連の発言が相場を大きく動かす要因となった。
1か月ぶり1ドル147円台「円安」 石破首相の利上げ慎重発言などで
《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》
石破首相の利上げに慎重な発言などを受け、外国為替市場で円安が進み、円相場は1か月ぶりに一時1ドル=147円台まで値下がりしました。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは同討論会で、市場関係者の間で石破政権がタカ派的な政策を取るとの懸念は後退したが、総選挙を経て「今やどれくらい石破政権が続くかに目を向け始めている」との見方を示した。
日銀の利上げ姿勢と米国の9月利下げ開始見通しで8月5日安値試しへ
門間氏は、円安がさらに進めば首相はよりタカ派的になるかもしれないと指摘。円が安定した状態で経済が緩やかに回復すれば日銀は利上げの時期だと判断するのに対し、地方経済は後れを取る公算が大きいとの見方を示した。首相は地方経済や中小企業を重視する姿勢のため、日銀と首相のマクロの考え方が少し違ってくるかもしれないと語った。
19日午前の東京市場でドル・円は堅調地合いとなり、154円44銭から155円27銭まで値を切り上げた。日本株安を受け、序盤は円買いが先行。
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他方、円金利は上昇した。5月13日に日銀が国債買い入れを減額したことを受け、国債の需給悪化や日銀の追加利上げ観測が高まった。
パウエルFRB議長は1月26日の記者会見でこう述べました。同日に公表されたFOMC声明で示された「FF金利の目標誘導レンジの引き上げが間もなく適切になると予想する」との表現から、具体的な利上げ時期に踏み込みました。