どのジブリ作品でも気になるのは「アシタカのモデルは何か?」ということです。
『もののけ姫』のラストで暴走したシシ神に首を返し、わずかな痣を残してアシタカの呪いは消えました。平和が訪れたものの、サンは森へ帰ることを選びます。そんな彼女にアシタカはこう告げます。「サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。共に生きよう」と。監督の宮崎駿が応じたアメリカのインタビューによると、アシタカはサンとタタラ場のために努力し、傷つくことになるそうです。それでも曲げずに生きて行こうとする彼の生き方は、今の時代に通じるとも語りました。またサンは山犬に襲われた人間が生贄として捨てた少女。そしてアシタカも神殺しの罪で故郷を追われた青年です。大きな共通点を持つ2人だからこそお互いの気持に寄り添いあえる良い関係性ができているのかもしれません。一部では劇中で既に2人は男女の仲になっていたという考察もあります。山犬のねぐらでのシーン、2人で横になって寝ていたところでアシタカが目覚め、サンをじっと見つめます。警戒心の強いサンが無防備に寝ているシーンから深読みしてこのような考察が生まれました。
「浮気者ではなかった」側の考察はさまざま存在します。1つ目は『もののけ姫』の時代設定が室町時代であり、村の長であったアシタカは「一夫多妻制」だったという可能性です。カヤはあくまで多くの妻のうちの1人だったと考えられるのです。2つ目は「カヤが妊娠している」という説。夜中に外に出るというタブーを冒してでも会うような仲、そして長でありながら簡単に村を追放された背景に「後継者が既にいるのでは」とこの説が浮上しました。3つ目は「アシタカは神を殺した罪で村に戻らない覚悟を決めており、カヤも理解して今生の別れをした」という説。その決意ゆえに小刀を手放したとも考えられるのです。もう会えないカヤをサンに重ねて、お守りとして渡したのかもしれません。都市伝説の域を出ませんが、カヤたちを守ってタタリ神を倒した際に実はアシタカは死んでいたという説まで囁かれており、カヤの小刀問題は『もののけ姫』の大きな謎として今日まで議論され続けています。
ジブリ作品でもトップクラスのイケメンとして名高いアシタカ。カヤの小刀論争に見える内面的な危なっかしさや呪いの腕を持つという生命の儚さといった負の部分もアシタカの魅力ともいえます。そんなアシタカのイケメンポイントを「①呪い②セリフ③自然」の3つの側面から紹介します!
1つは愛鷹山。漢字ではわかりにくいですが、「あしたかやま」と呼びます。
まず、1つ目のアシタカイケメンエピソードは、彼が呪いを受けたその経緯について。呪いを受けたものは村にいられないしきたりによって村を追われたアシタカですが、当然そうなることをわかっていました。誰よりも強いこの自己犠牲の精神が、彼をさらに魅力的にしていると言えるでしょう。さらにアシタカの呪いは、少しづつ進みやがては命を奪いますが、同時に強大な力を与えるものでもあります。デメリットのある強大な力というのは、いつの時代もカッコよく映るもの。呪いによってアシタカは超人的なアクションを見せています。
まずは「アシタカは浮気者」側から考察していきます。カヤの小刀事件について一人二役でサンとカヤの声優を務めた石田ゆり子は宮崎駿に抗議したところ「男ってこんなもん」と返ってきたのだそうです。もし事実なら石田ゆり子の気持ちを考えるとやるせないですね……。また勇敢さと優しさの両方を持ち合わせ、宮崎駿が「オレはいま一世一代の美形を描いてるんだ!」という名言を残したほどの美形。完璧人間と思われるアシタカに業を持たせたという考察もあります。一方で17歳の青年であり考え方は成熟していないという意見も。モロの君の的を射た発言に閉口する姿や自然と人間の共存を願いながらたたら場の人たちの被害には目をつむっていたりと内面は成長段階なのかもしれません。
タタラ場でサンを助けたアシタカでしたが、彼女はそんなアシタカに怒りをぶつけます。生命などいらないというサンに、アシタカは「生きろ、そなたは美しい」と告げるのでした。これはもちろん単純にサンの見た目を褒めたわけではなく、彼女の心を見通してのことだったのではないでしょうか。サンの親代わりのモロの君は、彼女のことを人間にも山犬にもなり切れない、哀れで醜い我が娘と形容していました。これはサンが人間であるにも関わらず自分を山犬としているという、アイデンティティが曖昧なことを言い表していると考えられます。だからこそ余計に人間を憎んでいるサンは、自分の命を過小評価しています。アシタカはそんなサンの不安定さを見抜き、彼女のひとりの人間としての価値を伝えたかったのではないでしょうか。また宮崎駿は、モロの君はサンに対して明け透けに「お前は醜い」と言ったりしているため、アシタカに「美しい」と言われて驚いたとしています。
ジコ坊からシシ神の首を奪い返そうとするアシタカ。サンに協力を頼むも、モロの君が命を落としたことで動揺した彼女に刃を突き立てられてしまいます。そしてサンを抱きしめたアシタカが言ったのがこのセリフです。「もう終わりだ。なにもかも」と悲嘆にくれる彼女に、アシタカは優しく「まだ終わらない。私たちが生きているのだから。力を貸しておくれ」と言うのでした。このセリフからはアシタカの諦めない強い心と、サンを励ます優しさが伝わりますね。
「おかえり、じゃあ村の長になってね」なんてことが、どうしてあり得るでしょう。
カヤの小刀の扱いはアシタカの行動で一番物議を呼んでいるシーンです。アシタカは村を出る時に、少女・カヤから玉の小刀を受け取りました。アシタカを「兄様」と呼んでいましたが、実はカヤはアシタカの許嫁。そして渡した玉(黒曜石)の小刀はエミシ一族に伝わる、乙女が異性に贈る変わらぬ心の証でした。しかし物語の中盤、アシタカはその小刀を山犬に託しサンに渡してしまうのです。やはりアシタカは心移りの激しい浮気性なのでしょうか……。
スタジオジブリの大ヒット作「もののけ姫」に登場する勇敢な主人公「アシタカ」がデザインされたアイテム。コレクションとしても大変人気の商品です
故郷を失うというサンとの共通点、呪いとの戦い、人間と自然との板挟みなどいくつもの苦難を乗り越えたアシタカ。ジブリ作品はイケメンが何人も存在していますが、その中でも群を抜いて人気が出ているのもうなずけます。一方でカヤとの関係性やサンとの未来など観客が考察できる余地が残っているのもまた惹きつけられる魅力かもしれません。アシタカの一挙手一投足に注目して『もののけ姫』を復習してみてはいかがでしょうか。
アシタカはどうしてかっこいいの? ⇒ ジブリ公式の回答が話題【もののけ姫のQ&Aを一挙紹介】
アシタカが呪いを受けるシーンは作品冒頭に登場します。アシタカは村の長として育てられていた少年でした。ある日、彼の村にタタリ神なる黒い物体が襲いかかってきます。村の危機に相棒のヤックルに乗って立ち向かったアシタカは弓矢でタタリ神を討ちました。しかし腕に呪いを受けてしまいます。その夜、巫女ヒイ様から「そのアザはいずれ骨まで届いてそなたを殺すだろう」と告げられます。さらに神殺しによって村を追われたアシタカは旅に出て人間と自然との争いに巻き込まれていったのです。タタリ神の呪いは怒りや憎しみに支配されたり、死の恐怖が迫った時に発生することが劇中で明らかになります。そして腕の呪いもアシタカの負の感情に連動し、命を削る代わりに超人的な力を発揮しました。劇中では弓矢で人の首を吹き飛ばしたり、十人力でやっと開くたたら場の門を片手で開いたりするシーンが登場しますが、この呪いによって得た力だったのです。
【アシタカとサン / Ashitaka and San】もののけ姫より
映画のラストで、なぜアシタカが「たたら場に残ろう」と言い出したのか。いや、そう言わざるを得なかったのか。
【アシタカとサン / Ashitaka and San】もののけ姫より · Comments. 142. Add a comment.
彼は断じて、故郷を棄ててたたら場でぬくぬく暮らしつつ時々サンとの逢瀬を楽しむ、そんな甘っちょろい境遇ではないのです…。
『もののけ姫』でアシタカがなぜ「たたら場に残った」のかようやく理解した · 1
アシタカが生まれ育ったのは「エミシの村」。エミシ=(東北地方)、日本史で習いましたね。この物語では、に追われて、険しい山の中に逃げ延びてきた民族だと語られています。
みにちゅあーとキット スタジオジブリmini もののけ姫 アシタカとタタリ神
アシタカがエミシの村から出ていく経緯は、呪いを解く旅に出るために自発的に村を後にするという風に考えることができます。ですがアシタカがエミシの村を出ていったのは、実は呪いを受けたため村の呪術師「ヒイ様」の決定によって追放されたからである、という説があります。その根拠としては、ヒイ様の宣告を受けた瞬間の村の男たちやアシタカの描写に絶望や深刻さが感じられることが、まずあげられますさらに人望のあるアシタカの出発にもかかわらず、時間は夜でカヤしか見送りに来ない、というのも自発的な旅立ちにしては不自然です。アシタカはもともとヒイ様から「アシタカヒコ」と呼ばれていました。ヒコは日子とも書かれ古事記の登場人物に使われる神性を表す言葉です。村を出てから彼がアシタカヒコと呼ばれることはないため、アシタカはヒコという言葉を剥奪されて村を追放されたのだ、と解釈することもできます。
その他の購入オプションについては、各商品詳細ページを確認してください。 アシタカとサン (ピアノ) [もののけ姫より]
この村にタタリ神が現れ、村人を守るためにアシタカは本来ならば傷つけてはいけないタタリ神を射殺してしまいます。
【宮崎駿監督案は『アシタカせっ記』】『もののけ姫』が難解な理由
カヤが罰を覚悟でアシタカを見送りに来ますが、勇ましい旅人の門出であれば見送りがあって当然のはず。それを夜逃げのように出ていかなければならないのは、経緯はどうあれ村人から後ろ指を刺されるような形で逃げ出していく状態だから、ということです。
1997年に公開された、スタジオジブリの長編アニメ映画作品『もののけ姫』。 ..
アシタカの部族であるエミシ(蝦夷)とは、東と北の間の山中で狩猟、採集、焼畑、工芸を生業とする部族。稲作農耕民である大和政権の支配下に入ることを拒んで、本州北部の山中に隠れ住んでいる原日本人の残党です。特にアシタカは8世紀末から9世紀初頭にかけて現在の岩手県で活躍したエミシの族長・アテルイの部族の末裔である、と宮崎駿は言っています。アシタカやエミシの村の人たちの衣装や持ち物は、縄文時代の文化やブータンの高地民の風俗などを参考にしてデザインされました。アシタカの許嫁・カヤが持っている刀は蕨手刀という東北地方を中心に8世紀ころまで作られていた刀で、実際にエミシが戦うときに使っていたそうです。
【もののけ姫を見て_1】なぜアシタカはサンに玉の小刀を渡したか?
アシタカは死を覚悟してタタリ神を仕留めます。さすが男前。
しかし、倒す過程で彼は腕に呪いを受けてしまいます。